【コスプレ造形】素材と塗料の相性を知ろう! 塗装で失敗しないための基礎知識
コスプレ造形をするうえで知っておきたいのが、素材と塗料の相性。
頑張って作った造形物、塗料を塗ったら表面が溶けてしまった……なんて経験ない?
実は、それぞれの素材・塗料に綺麗に仕上がる組み合わせ、絶対NGな組み合わせが!
今回は、コスプレ造形をするうえで知っておきたい、素材&塗料の基礎知識を解説する。
文:大村斉子
COSPALAYMODE 2021年3月号掲載記事
コスプレ造形で使う塗料は主に3種類
コスプレ造形でよく使われる塗料は、大きく分けて3種類。
水性塗料、エナメル系塗料、ラッカー系塗料だ。
それぞれの得意・不得意をしっかりと理解しておこう!
水性塗料
水性塗料とは、塗料を水で希釈して塗りやすくしてあるもののこと。
基本的に、成分に「水」表記があれば水性塗料だ。ここで紹介する物は乾燥前は水溶性、乾燥後は耐水性。
ノビが良い、臭わない、筆やハケを水で洗えるというメリットがあるため、扱いやすく、家で体に悪そうな臭いをさせたくない人にオススメ。
色数も多く、マットな色再現が得意! ただし、塗膜がやや弱いので擦れる部分に使うのは避けよう。
なお、同じ水性でも溶剤に溶かした物と乳化させている物があり、扱いがやや異なるので注意。
水溶性アクリルラッカー系塗料
ラッカー系の特徴を持ちながら、水で洗えるのが水溶性アクリルラッカー系塗料。
溶剤を含むため、希釈には専用の薄め液が必要だ。
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水性ホビーカラーうすめ液(¥600 / 400ml / GSI クレオス)
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タミヤカラーアクリル塗料(¥150 / 10ml / タミヤ)
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タミヤカラーアクリル塗料溶剤(¥600 / 250ml / タミヤ)
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水油性エマルション系塗料
塗料と水分を乳化させた状態の塗料が、水油性エマルション系塗料。
溶剤不使用で安全性が高く、水で希釈OK。
ただし、撹拌や希釈配分にコツが必要!
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アクリジョン(¥300 / 18ml / GSI クレオス)
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ファレホ(¥300 / 17ml / ボークス)
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アクリルガッシュ
アクリルガッシュは、チューブに入ったアクリル絵の具。学校の授業で使ったことがある人も多いはず!
マットで均一な塗りが得意。
薄めずに伸ばしたい時は「リターダー」というアイテムが必要になる。
アクリルガッシュ(¥270 / 20ml / ターナー)
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アクリルガッシュリターダー(¥280 / 60ml/ ターナー)
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エナメル系塗料
エナメル系塗料は、石油系の有機溶剤で塗料を希釈した油性の塗料。
発色とノビが良く、乾燥が遅い分、筆塗りでもムラなく仕上げることができる。
塗膜が弱めなので、水性やラッカー系の上に塗った後、エナメル系溶剤で拭き取り可能。
独特の美しい質感を持ち、金属やパール系の発色が特に得意!
シンナー臭はあまりないが、灯油っぽい臭いがするのがデメリット。
タミヤカラーエナメル塗料(¥160 / 10ml / タミヤ)
エナメル溶剤(¥150 / 10ml / タミヤ)
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ラッカー系塗料
ラッカー系塗料も油性の塗料だが、エナメル系とは違ってシンナーで希釈されている。
ラベルに「有機溶剤」と表記があればラッカー系塗料だ。
乾きが早く塗膜も強いのだが、溶剤臭がキツく揮発性も高いので火気厳禁、換気必須。できれば防毒マスクをつけて作業しよう。
薄いプラスチックやスチロールの場合、溶けてしまうことがあるので注意して!
△ ラッカー系塗料の希釈や洗浄には専用溶剤が必要。薄める用、ツールウォッシュ、筆ムラを抑えるためのリターダーなど、購入前には用途を確認して。
ラッカー系スプレー
より手軽に手に入るのがラッカー系スプレー。
ホームセンターなどで購入可能だ。種類が多いので用途や求める仕上がりに応じて選ぼう。
△ DIY用のスプレーは容量が多く、模型用より溶剤が強め。一方で模型用のスプレーは、コスパは悪いが繊細に仕上がる。種類が幅広い分、適材適所で選ぼう。
塗料同士の相性一覧表
水性塗料 | エナメル系塗料 | ラッカー系塗料 | |
---|---|---|---|
水性塗料 | △ | ○ | ○ |
エナメル系塗料 | △ | △ | ○ |
ラッカー系塗料 | × | × | △ |
塗料を塗り重ねる場合、気をつけたいのが塗料同士の相性だ。
基本的に、塗料は溶剤が強い順に重ねていけばOK!
複数の塗料を使う場合は、ラッカー系 → アクリル系(水性) → エナメル系の順を守ることが大事。
エナメル系下地、水性下地にラッカー系塗料を吹きかけるのはNG!
なお、厚塗りしたり何度も筆で動かしたりすると、正しい順番で重ねていても塗料が溶けてしまうことがあるので気をつけて。
接着剤の種類も意識しよう
塗料と同じように、接着剤にも油性と水性のものがある。
うっかりパーツを溶かしてしまわないよう、接着剤の種類にも注意しておこう。
水性接着剤
木工用ボンドに代表される、合成樹脂を水に混ぜ合わせた接着剤。
乾くのに時間がかかるものの、臭いが弱くて扱いやすく、価格も手頃!
固まるとほぼ透明になり、水を含ませると白くふやけて剥がれやすくなる。
木材同士の接着や、紙での工作に向いているアイテムだ。
木工用ボンド(¥109 / 50g / コクヨ)
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手芸用ボンド(¥280 / 60g / クロバー)
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ゴム溶剤形接着剤
G系ボンドに代表される、合成ゴムなどを有機溶剤で溶かした接着剤。
塗料のラッカー系に相当し、溶剤が揮発すると硬化接着する。
乾くのが早く接着力が強いため異素材の接着に有効だが、溶剤臭がキツく、換気や取り扱いに注意が必要。
ラッカー系塗料と重ねると少しずつ溶けるので注意!
ゴム、布、金属など、幅広い材料に使用可能だ。
ボンド G クリヤー(¥200 / 20ml / コニシ)
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アルコール系溶剤接着剤
発泡スチロールを溶かさない、アルコール系溶剤を使った透明接着剤。
溶剤が揮発すると硬化する。
発泡スチロールと紙、木、布、金属などを接着できる。
セメダイン 発泡スチロール用(¥170 / 20ml / セメダイン)
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その他の接着剤
接着剤のなかには、溶剤を含まないものも存在する。
それぞれメリットとデメリットがあるので、使い所を見極めるのが大事!
瞬間接着剤
溶剤を含まず、空気中のわずかな水分と反応して短時間(数秒〜数分)で硬化する接着剤。
他に比べて保存可能期間が半年程度と短いのがデメリット。
水、衝撃にはあまり強くないが、金属や硬質プラスチックなどに使用可能だ。
アロンアルフア(¥450 / 2g / コニシ)
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エキポシ樹脂系接着剤
溶剤を含まず、エポキシ樹脂を主成分とする主剤と硬化剤を混合して使用する強力な接着剤。
固まる前なら薄め液で拭き取れるが、固まったらもう外せないので注意!
金属などの固い物の接着に向いている。
ボンドクイック5(¥330 / 6g / コニシ)
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塗装下地の必要性と種類
コスプレ造形は、いろいろな素材や状態の物に塗装を重ねることがほとんど。
塗料の溶剤で溶けてしまう素材もあるため、保護のために下地を塗る必要がある。
また、素材が違うと同じ塗料を塗っても仕上がりの質感が異なってしまうことも。同じ質感に仕上げるためにも下地は必須だ。
逆に言えば、塗料と相性が良い1種類の素材のみを使った場合、下地はなくても大丈夫。
・塗料と相性が悪い素材への塗装が可能になる
・塗装が剥げにくくなる
・発色・ツヤが良くなる
・塗料のノリ・ノビが良くなる
水性下地材
コスプレ造形でよく使われるのが水性の下地材。
ジェッソとモデリングペースト、ジェッソとボンドなど、水性下地材同士は混ぜて使うこともできる。
コスパと食いつき強化でボンドブレンドを好む人も多いが、初心者には造形ベースが強い味方になるはず!
ジェッソ
コスプレ造形でよく使われるのが「ジェッソ」だ。
マットな質感で隠蔽力が強く、一度塗りで下の色はほとんど見えなくなるのがポイント。
アクリル絵具、油絵具、水彩絵具、ラッカー塗料など、ほとんどの塗料を乗せることができるオールマイティな下地材だ。
ジェッソ(¥1250 / 300ml / リキテックス)、ブラックジェッソ(¥1600 / 300ml / リキテックス)
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モデリングペースト
本来は表面を盛り上げるために使用される「モデリングペースト」も、下地材として使えるアイテム。
ジェッソよりももったりとした質感で、ローラーでザラっとさせたり、ナイフで盛り付けてラフな凸凹を演出するなど、質感を出したい時にオススメ!
モデリングペースト(¥1400 / 300ml / リキテックス)
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木工用ボンド
接着剤だけでなく、下地材としても使う人が多い「木工用ボンド」。
乾くと透明になること、水性であることから意外と使用範囲が広く、コスパも抜群!
接着剤だけに、素材への食いつきも良い。
木工用ボンド(¥109 / 50g / コクヨ)、木工用速乾ボンド(¥149 / 50g / コクヨ)
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造形ベース
「コスプレ造形向け」として販売されている下地材が「造形ベース」だ。
コスプレ造形で扱う素材のほとんどに対応しているため、とりあえずこれを使っておけば大丈夫!
造形初心者にはオススメのアイテムだ。
造形ベース(¥1300 / 300g / コスプレファクトリー)
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ラッカー系下地材
有機溶剤ベースの下地が、ラッカー系下地材だ。
基本的には模型用のアイテムなので、コスパは良くない。
乾きが早く、水に強く、食いつきが良い反面、臭いが強く、乾燥後は硬化するため曲げに弱くひび割れやすい。
プラやレジンなどの硬い小物向けの下地材だ。
Mr. サーフェイサー(¥600 / 170ml / Mr. ホビー)
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Mr. 溶きパテ(¥300 / 40ml / Mr. ホビー)、Mr. サーフェイサー(¥300 / 40ml / Mr. ホビー)
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トップコートは必要?
ネイルアートと同じように、塗装面の保護や艶出し(あるいはつや消し)のため、最後に保護膜をかけるのがトップコート。
なくても問題ないが、使うと傷やスレへの耐性が上がるほか、段差や質感差を埋めて表面を整えてくれる。
傷つきやすいパーツだけでもコートしておくといいかも。
トップコート(¥500 / 88ml / Mr. ホビー)、造形トップ(¥1480 / 150g / コスプレファクトリー)
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素材・下地・塗料の組み合わせを検証
コスプレ造形で使われることの多い、さまざまな種類の発泡素材。
今回は、素材、下地、塗料の組み合わせによる仕上がりの違いを、実際に塗装して検証してみた!
使用したのは、発泡ポリエチレン素材3種類(EVAシート/ボード、コスプレボード、サンペルカ)、発泡スチロール素材1種類(発泡スチロールボード)。
検証結果の写真は、左から塗料なし、金のアクリル絵の具で塗装、金のラッカースプレーで塗装、となっている。
柔軟で曲げやすく、発泡部の隙間に接着剤が食い込むため強い接着が可能。硬さや厚さの種類が豊富。
・EVAスポンジシート(ダイソー)
・EVAボード(セリア)
・コスプレボード(コスプレファクトリー)
・COSボード(クラッセ)
・サンペルカ(コスプレファクトリーなど)
別名・スチレン。柔軟性には乏しいが軽量で安価。有機溶剤で溶けるので、アルコール系溶剤の接着剤や無溶剤タイプを選ぼう。
・スチレンボード(カラーボード)
・発泡スチロールブロックなど
EVAシート/ボード
ダイソーやセリアなどの100均で入手できる、身近な造形素材がEVAシート/ボードだ。
質感はほぼコスプレボードと同じだが、厚さや色が限られている。
下地:なし
アクリル絵の具は下地なしでも綺麗に発色した。
ラッカーは素材に染みてしまったので、ボードの質感がそのまま出る結果に。
下地:木工用ボンド
塗装していない素の状態でもツヤ感が出た。
塗料はどちらも綺麗に発色している。
下地:ジェッソ
下地のみだとマットな質感に。
塗料はどちらも綺麗に発色している。
下地:造形ベース
下地のみだとセミマットな光沢感に。
塗料はどちらも綺麗に色が乗った印象。
下地:ラッカー系
ボードのざらっとした質感が消えず、塗料を塗っても変わらなかった。
コスプレボード
安定感のあるコスプレ造形用のボード。
COSボードやソフトボードなど、いずれもそれなりに使いやすい素材だ。
下地:なし
ほぼEVAボード/シートと同じ感触。
アクリル絵の具なら、下地なしでも綺麗に発色した。
下地:木工用ボンド
素の状態でもツヤが出た。
塗料はどちらも綺麗に発色!
下地:ジェッソ
下地のみだとマットな質感に。
こちらも塗料の発色は良好だ。
下地:造形ベース
下地のみだとセミマットな光沢に。
どちらの塗料も綺麗に発色した。
下地:ラッカー系
EVAボードとは違うキメが残った。
発泡が大きいというより、凹凸が深いような印象。
サンペルカ
熱加工による折り曲げなどが得意なサンペルカ。
他の素材に比べてザラッとした質感が強いため、塗装よりも合皮貼り用などで使われることが多い。
下地:なし
アクリル絵の具を塗ってもザラッとした質感に。
下地がないと、ほぼ確実に素材のキメの荒さが出てしまう。
下地:木工用ボンド
発色は良くなるが、他の素材と同じ量だと元の質感が残ってしまうので注意!
下地:ジェッソ
木工用ボンドよりは質感がカバーされた。
塗料はどちらも綺麗に発色。
下地:造形ベース
一番綺麗に素材の質感が消えたのが造形ベース。
発色、質感ともにかなり良い!
下地:ラッカー系
中に染みてしまい、下地効果がほとんど発揮されない結果に。
発泡スチロールボード
有機溶剤に溶けてしまう発泡スチロール素材は、下地が必須。
ラッカー系塗料だけでなく、Gボンドや瞬間接着剤でも溶けるので気をつけよう。
下地:なし
ラッカー塗料は、やはり表面が溶けてボコボコになってしまった。
アクリル絵の具で塗ったところも、素材の色・質感の影響を受けている。
下地:木工用ボンド
やや素材の質感が残るが、発色は良好。
きちんと塗布されていれば、ラッカー塗料を使っても大丈夫。
下地:ジェッソ
木工用ボンドとほぼ同じ仕上がりに。
アクリル絵の具もラッカー塗料も綺麗に発色した。
下地:造形ベース
安定したカバー力で美しい仕上がりに!
どちらの塗料も発色は良好だ。
下地:ラッカー系
意外にもラッカー系下地では溶けなかった。
アクリル絵の具はそこそこの発色。しかし、ラッカー塗料は表面が溶けてしまった。